自分の持ちものを大切にするApple TVという存在

 Apple TVは確かに、ストレージを持たないという意味で従来のTVと同じだ.


 私は普段の生活でほとんどTVを見ないので、Apple TVは買わないだろうと思っていた.
 ただ、周りで「これはすごい機器連携だ!」と言っているのを見て、使わぬわけにはいかないな、と思って購入したのが1.5ヶ月前のこと.「これをTVと言っていいかわからないが、これは“自分が持っているコンテンツを大事にしてくれるプロダクトだ”*1」と感じたのが、使って数日での感想だった.
 そう、「持ってるものを大事にしてくれる」、そういう感覚.


 TVは好きじゃない.「今見てないと、もしかしたら後悔するかもしれない」という思いを作って引き止めるくせに、自分の期待するようなものを選ぶという選択権がちっとも無い.とにかく、CATVも繋いでチャンネルという選択肢は増えたが、チャンネルを変える「間」だけで本当に面白いかどうかを判断できないのがつらい.変えている間にもっと面白いシーンが終わっちゃうかもしれない.
番組表表示のおかげで、「自分が何を期待したいのか」ということを少しフラットな立場で見つめることができるようになった.だけどそれでも足りないんだ.

 で、そんなくらいなら、自分が持っている「流れていかない」コンテンツを楽しむほうがよっぽど心が落ち着くわけだ.自分の期待を裏切らないことを知っている.お金を自分で払って選んでいるだけあって「消費する」覚悟があるし、少なくとも「時間」だけは待ってくれる.

 とにかく、「時間に融通の利かない」現象は、300円払って借りたVoDコンテンツを見る暇なくてレンタル期間が過ぎたよりも、私にとっては高価に思える.リアルタイム性をもとめるものは、本当の「ライブ中継」だけでいいのだと思う.収録したものを なんでそわそわしながら見なければいけないのだろうか.なんだか、「今見ないと損だよ!」の押し売りのようで、すごくみっともないし貧しい感じがする.


 ちなみに、もともと「勉強のため」ということのテーマであった「機器連携」については、「みんなが期待してたことをやったんだよね」という感じ.いや、これがとーーーっても大変なことは百も承知*2
 Air Playを週末ごとに多用しているが、こう来るだろうな というのも予想通り.AirMac Expressから使っている私としては、Bonjourのおかげで、まるでITの時代とはかけ離れた時代に買ったスピーカーでさえもリモート操作できる感覚が大好きだった.これをよく、一般ユーザーレベルに落としたものだなぁというのが正直な感動.そう、こういう感覚も「すでに持っているものを大事にしてくれている」と思ってしまう.

 こういう、持っている機器自体を全部Renewalさせなくても、何かバッファを置ける機器をはさむことで、古い機器のまま新しい機能を使わせるようなやり方はたくさんあるはずなんだ*3
 しかしこういう存在のプロダクトは、「中途半端」なために台数が出にくい.そこをAppleは「安価さ」によってハードルを下げたのだろう.もう一歩何か「クリティカルな他の意義」を持たせられたら最強の爆発的商品として扱われるだろう.さて、そのために彼らはどんなソリューションを用意してくるだろうか.


 HDMIケーブルとあの小さな本体を持っていくだけで、iPhoneから手元のコンテンツを見せてあげられる と思うと、「実家に持っていくのはiPadでなく、Apple TVにしようか」と正月に迷ったくらいだった*4


 人のどんな生き方を大事にしようとしているのか、想像できるものを創造したいものだ.

*1:これをケータイと言っていいかわからないが、これは“自分の興味のスピードに答えてくれるプロダクトだ”と思ったのがiPhone

*2:正直、毎日の仕事でも苦労しているし.

*3:事実、Blutoothレシーバを購入したとき、帰り道でiPhoneからの音楽をイヤホンで聴いていたものも、家に着いたと単にオーディオジャックの吐き出し先をオーディオ側のマイク端子に刺さったジャックに差し替えることで、超アナログな機器間シームレス再生を体感していた.

*4:それでもiPadにしたのはCamera Kitでその場で吸い上げて見せたくなる機会のほうが多いだろうという判断から、Apple TVは持っていかなかった.もしかすると、Apple TVを持っていけばよかったかもしれないな.