情報の蓄積がもたらす、「成果主義」の次
今日をもって、「努力が結果になってそれに対価が付く仕組み作りを目指す」のは辞めようと思う．
「適切な対価」という概念が不必要だとは今でも思わないけれど、見返りを期待する成果・結果が全てという状態よりも、きっと「期待への対応」が論点になる時代になるように思う．ようやくPay Per Clickや短期的投機の減衰など、「成果主義の完成」が近付いてきたと言えるわけだが、完成が近付いたということは もうその次を考えておかなければならない．お金の付き方こそが、社会を構成する「付加価値の動き」を表しているからだ．
これまでは「成果」というものが 何らかの主たる行為（ビジネスなど）であり、対価というものが「ご褒美」の関係であった．が、未来では 流通する金銭は「対する」「価格」ではなく、「期待額」であり 主たる行為こそが「対する」「結果」としての存在になるだろう．今の「成果が出たからこれだけの対価をあげましょう」というやり方が「暴力的だ」として通じない世界になるのではないだろうか．というのも、期待主義的に重きを変えた方が、いろいろと現代の歪みを解消する可能性があるはずだからだ．
さて「期待」、それは単純に昔の日本企業モデルで話に出されていたような「育つまで待つ」ことがメインの目的ではない．これはただ「管理育成」していたにすぎない．新しいそれとは、履歴情報がトラッキングしやすくなったという冷徹な理由の方が大きくなるということだと考える．もはや、現代は急に雲隠れしたり、急に死ぬようなリスクも回避できるようになってきた．前者はどこかの防犯カメラに写り込むだけで見つけられてしまったような事実もあるし、後者についてもたいていの病気の場合は死ぬ随分前にそれが予期できるようになったし、事故であっても多くの場合は救命できるようになっているし、自殺も引き止め・救命されやすくなるだろう．*1 今から見たら、ただの監視社会のようだが 一般的に暮らしている人にとっては 監視されている気持ち悪さよりも、正当に過ごしている強みに使われる恩恵の方が大きく感じるだろう．
このように「短期間のうちに起きるリスク」がどんどんと低下しているし、その人の「過去」は「今」と同じように目につきやすい位置に出てきているのが現実だ．人々の生活は「蓄積」と「予測」からますます離れられなくなっていく．
つまり、期待された内容に対してどのくらいの結果を出せるのかを 期待される側が自己申告的に調節をしなくてはいけなくなるのだろう．金の持ち逃げができなくなるからだ．裏切り結果は蓄積されて行く．裏切り履歴が残るくらいなら、自己申告して投資額を押さえてもらった方がマシと判断することが賢い選択になり得る．金銭のように、消費してどこか忘れてしまうだけだったこれまでが「まだ優しい社会だった」と思えるほどに 人々の記憶よりも冷徹な「データ」として蓄積されて行く．（もちろんそういった世界になればなるほど、多くの冷徹な予測から引き出される以外の「思いやりや愛情」こそ、人間として更に貴重になって行くのだけれども．）
また、それは これまでのような主従関係がぐらつき、更に複雑化する世界になるとも言えるのだろう．所謂 雇う側が先に投資を始めるのか、何か能力を発揮する側が先に仕込み始めるのか、先に始めた方が 先に履歴に残るという意味で、ここにこれまでのような一方向の力の差が決まって生じるわけではなく、どちらが先導するかはまた違うルールができるのだろう．所謂指示待ち人間が厳しい時代になる．指示待ちではなく、学んでいるという自己申告をしなくては期待はずれになる．
では、結果の蓄積の無い人間が不利になる社会になるのか？これまでは実績が無いことが、機会を失う理由になっていたが、これも解決できる方向に進む可能性がある．例えば、誰かの名前をググって調べた時、たくさんの過去についての情報が溢れてきたらそれはもう目に入った時点で、参考にせざる得ない思考に陥るだろう．しかし、ググっても出なかった場合はどうだろう？それは全く「これまで」と同じように、その時点から当事者間にとっての「履歴」が構築されることになる．これは、原始時代から変わらないだけのことだ．
また、人間はその時入ってくる情報量の多さによって、思考の中で何が多くを占めるか変化する．「蓄積データ」があれば、そちらに気を取られる．では、過去に何か失敗してしまった人は再起不可能なのか？それもまた解決策があるだろう．アグレッシブな“前のめり”の活動を通して、より多くの新しい履歴が蓄積され、その中で多くを占めるものや最新のものがどんどん割合を増すことでカバーして行くだろう．*2
お金に期待して動くのでなく、期待に対して動く・動きに期待してお金が動く．対価が付いてくる分しか働かない・頑張らないような世の中ではなく、（それはとても緻密で謙虚で真摯でクレバーな思考をした上で成されるべきであるが、それは多くの技術や過去が 今よりも容易にできるよう助けるだろう）どう先に振る舞えるか、勇敢か、割り切れるのか、度胸があるのか、というよりゆらぎの大きな行動がキーになるだろう．
