ものづくり思考の昇華

 私の家族は典型的な「ものづくらー」である.父は産業用機器のメーカーをやっているし、母は彫金師である.私も、気が付いたらいろんなものを手作りする経験と喜びを知っていて、水彩画も描くし、服も作るし、料理も好きだし、機械も分解好きだし、なんだかんだものづくりが大好きである.
 しかし私は、あるときからものづくりではなく「仕組みづくり」を生業としている節がある.前の仕事もそうだった.しかし、マインドとして「何かをCompleteするために作り込む」ということには ものづくりも仕組みづくりも 変わりは無いと思う.
 今は、規模の大きな産業界にいて 私は物を作る側にいないが、それでもいろんな「情報財」や「仕組みづくり」に対して、ものづくり的な発想で取り組んで、その精度を高め、パッケージ化することに喜びを感じている.


 しかし、本来 私の存在する「物を作らないセクション」というのは、そういうマインドで仕事に接することはほとんどない.どちらかと言うと、株取引に近く、「一番いい時期に一番いいものを嗅ぎ取ってすり替える」それが仕事になっていたりする.
 とても悩むが、自分の性質として 作り込む楽しみを捨てることはできそうに無い.



 ものづくりと言っても、多くの企業は昔に比べると「作り込む」ウェイトが減ってきていることは確かである.水平分業で部品はもはや他社が作りこんだパッケージを組み合わせるだけだし、果てはOEM/ODMで、「チェックすること」だけが仕事になっていたりする.それでは 元々あったレベルの「ものづくり」の楽しみを感じられることは無い.

 しかし、だからこそ 1レイヤー上に昇華させた「ものづくり」思考が必要になるのだろう.パッケージとしての「ものづくり」であるという認識と、「作り込み」や「徹底」といったやり方・その喜びを認知させることが、本来「物を作る喜びを生業とした人々」への未来の解になるのだと思う.